2012年03月10日

【社会と職業とアートと】 第5回 アーティストの休息(後篇)休暇について

   
アーティストの休日 ウサコの一週間のコピー.jpg   
   
アーティストの休息(後篇)休暇について
   
   
前回から半年近くのご無沙汰となりました。
この記事を楽しみにしてくれている皆さま(いるのかしら?)、
ここ数カ月いろいろとバタバタしておりまして、
連載の間が開いてしまい大変申し訳ございませんでした。

またこれから心を新たにコツコツと記事を書いていきたいと思いますので
よろしくお願いいたします。

前後篇にしておきながら、かなりのブランクで
皆様の記憶も薄れてしまっているかもしれないですが、
アーティストの休息について考える後編は「仕事をしない日」、
休暇と休日について考えてみましょう。
 
(ちなみに少々ややこしいのですが、講学上「休日」とは労働者が労働義務を免れる日、
 「休暇」とは権利として労働から離れることができる日とされており、
 厳密にいえば意味合いが違います。
 イメージとして「休日」は土日祝とか定休日とかいったもともと業務自体がない日のことで、
 「休暇」の方は「この日は本来なら仕事の日だけど休みにしたい」と
 あえて休みを取得する感じですかね。)


・アーティストと休暇 

では、アーティストの「休暇」となるとどうなのでしょうか?
アーティストの方って自営業だから休みは自分で好きに決められそう…。
と私も漠然と思っていたのですが、実際はそうでもないのではないでしょうか?
 
人によってそれぞれ違うと思いますが、例えば舞台関係の仕事をしている方なら、
公演のスケジュールに合わせて必ず働かなければならない日もあるでしょうし、
雑誌にイラストを描いている方なら締め切りは守らなきゃならない…等々
ある程度時間的に拘束されている面は多々あると思います。
 
特にパフォーマーの方は既に公演日が決まっていたら、周囲にも迷惑がかかってしまうので、
日程をずらすなんて個人の私的な用事では出来ないでしょうし。
実際休みを取りたくても「この日は公演日だけど友達の結婚式だから、仕事しないで休もう」とか
簡単には決められなさそうですよね。

そうなるとパフォーマーの方なら公演や稽古の予定がある程度先々まで埋まっていて、
これらを優先していった結果、何も予定が入ってない日を休みにする
といった流れになるのではないかと思います。

前述した「本来働く日だけど休みを取るという」意味の休暇というような概念自体、
フリーで働く人には当てはまらないのだと思います。

結局アーティストの中には「確実な休みがない」という人が少なくない
というのが実情なのではないでしょうか?

確実に休める日がないのが、個人の働き方として不利益なのかどうかは一概には言えないです。
流動的なスケジュールで働くことは先々の予定が立てづらく、
ある意味では不安定とも言えるのかもしれません。

でもアート業界においては急に決まるお仕事もあれば、
逆に急にキャンセルになるお仕事もあると思います。
だから「仕事がある時・依頼が来た時に働く」というのは正しい判断なのだとも思います。


・いつ働き、いつ休むかを自由に決められるのは良いことばかりなのだろうか?

自分で働く時間を決定できる分、フリーのアーティストさん達は
仕事の状況に合わせて、休憩や休日を削って調整をしている面もあると思います。
 
以前も書きましたが、労働法は、
弱い立場にあり使用者から一方的な労働条件を押し付けられがちな労働者を
保護するためにあるものなのですが、
アーティストは自分で労働条件を決められる反面、
ベストの仕事にする為にここまでやろうと思うと、
めいっぱい仕事の為に時間をとってしまって、
かえって休む時間がないってこともあるのかもしれません。

人によっては本業がお休みの日は別のバイトをしないと生活費が苦しい…なんてことも考えられます。
(くまころの今の勤め先にも劇団に所属しながらフルタイムで働いている人がいます。)
 
言い換えて見れば、自分の労働条件を好きなように決定できるということは、
休息を多く取り、身体を休めるという方向に条件を定めるばかりでなく、
仕事の完成にあわせて「休まずに働く」ことを選ぶこともできるということです。


・長時間労働の弊害

アートのお仕事は「ものを作りあげること」がゴールで、
その作り上げたものに対して、お金が支払われています。

この点、労働力を提供し、労働の対価として報酬が得られるという、
一般的な雇用契約とは様々な点で同一に語りづらいことは事実です。

ベストの仕事をする為には短時間でさっと作るより、
時間をかけて丁寧に作り上げるほうが素晴らしいものが完成すると
一般的には言えるかもしれません。

例えば役者さん、ダンサーさんなら稽古量が多いほど本番は素晴らしいものになるでしょうし、
作家さんなら入念に取材し、文章も練りに練って推敲したほうが
良いものになるのが通常のことと思います。

だからこそ多くのアーティストの皆さんが沢山の労力をかけて
自分自身が納得する最高の仕事をしようと時間をかけて努力するのだと思います。
 
でも、慢性的に長時間労働が続いて心身ともに疲れている時には、
そうとも限らないのではないでしょうか。

きちんとした休みが取れないまま仕事を続けることは過労につながり、
結果的にはアーティストの皆さんの健康を害することにもなります。 
また疲労のため注意力が普段より低下している状態での作業は大きな事故を招くこともあります。

結局、度を越した長時間労働では、本当に良いものは作れないと思いますし、
こういった長時間労働の弊害が積み重なって行くことで重労働に耐えかねて離職していく人が増えれば、
良い人材が育つ土壌がなくなってしまい、それぞれの業界自体の衰退を産み出しかねません。
やはり、ある程度の休息はアーティストにとって必要なのだと思います。


・アーティストにとっていちばんいい休息の取り方とは?

本来、アーティストの方も休日は身体をしっかり休めたり、
読書やスポーツをして過ごしたり、どこかに出かけて別のジャンルのアートに触れる等の
リフレッシュをして新たな表現活動への英気を養う時間にすることができれば一番良いのだと思います。
 
でも、現実としてそれが難しいのは、
生活の上で時間もお金も十分でないという事実があるのではないでしょうか。

今回のテーマの根本的な問題点として、
結局はアート業界において「本業だけの収入では生活が苦しい」
という方が少なくないというところに行きつくのかもしれません。
 
この問題を解決するのは個人の力ではなかなか出来ないことかもしれません。
社会全体がアートの価値を再確認することも必要なのだと思います。
 
くまころも今までずっと自分一人考えて見ても世の中は何も変わらないと、どこか諦めていました。
今回ジャンク派で連載の機会を与えて頂いたことで、
本当に微力でも何か問題提起をするきっかけになればと思います。
 
次回も頑張っていきますので、引き続きよろしくです!!
     
    
     
くまころ
   
   
   
posted by ジャンク派 at 21:52 | Comment(189) | 【社会と職業とアートと】